三崎港〜ホクレア・オン・ホクレア

江ノ島でカヌーをしまい、軽くカラダを洗って、カメラマンでもありカヌークラブの監督でもあるキノシタさんのクルマで三崎港へ。「オレもカヌーの上から撮ればよかったなぁ……」とキノシタさんはしきりに悔しがっていたけれど、いいじゃないですか。〈カマヘレ〉には内田さんもいたし、一応水面からは僕も撮影することはできた。撮影クルーは散らばることが鉄則なのだ。

夕方、三崎港にはすでに〈ホクレア〉は入港していた。宇和島から〈えひめ丸〉の遺族の方々も駆けつけていた。横浜へ入港する時に〈ホクレア〉で翻っていた鯉のぼりは、彼らから贈られたものなのだ。皆さんを〈ホクレア〉の中へ案内する内野さん。彼女はホントに、いつだって誰かのために働いている。僕とキノシタさんはいったん東京に引き上げようと思っていたんだけど、我々も三崎に泊まることにした。近所に素泊まりで宿を押さえた。寝袋もあるし、いつでも〈ホクレア〉泊は可能だ。

ふたたび港に戻ると、僕と目が合うなりブルースがやってきて、僕にあるものを手渡した。それは宇和島出航の前に渡しておいたタイガーの写真なのだ。七里ヶ浜に寄るかもしれないと聞いていたので、その時には〈ホクレア〉の上に置いてほしいとブルースに頼んでおいたものだ。
「ただし、これはタイガーが僕の名前を書いてくれているものなので、あつかましいお願いだけどセレモニーが終わったら返してほしくもあり……」
「もちろん。ただし忘れるといけないので、到着後に必ず声をかけてくれよ」
そしてブルース・ブランケンフェルドは忘れていなかった。ハワイで初めて会った時にも思ったことだけど、彼は本当に義理堅い男だ。

いつもそうだけど、〈ホクレア〉関連の人たちってなかなか次の行動に移ろうとしない。誰か誘って三崎のマグロでもご馳走しようと思っていたんだけど、とにかくお腹が空いていたので、ひと足お先にキノシタさんとご飯を食べ、再び〈ホクレア〉のもとへ戻った頃にはすっかり日も暮れていた。ワッチにはチャド&ポマイ夫妻が入るとのこと。デッキの上にはDUKEさんもいた。もう最近、すっかり〈ホクレア〉に住み着いているね。

「〈マカリィ〉で日本に来る計画はないんですか?」僕はチャドに聞いてみた。
「今のところ具体的にはないけれど、希望は持っているし、できないことじゃないよね」
「ハワイから直接日本列島を目指すのは、技術的にムリなのでしょうか?」
「いや、それもできる。〈マカリィ〉だったら、20日とちょっとで到着できるかもしれないな」
北西ハワイ諸島伝いに北日本から入ってくることになるのだろう。でも今は〈ホクレア〉航海の真っ最中。あまり途方もない話を持ちかけるのはやめよう。
薄曇りながら、空にはいくつか星が見えた。
「ところでチャド、ホクレアってどの星なんだろう?」
「あ、あれだ」
チャドは数秒空を見上げた後、意外な方向を指さした。それは〈ホクレア〉のメインマストの、まさに真上だったのだ。
by west2723 | 2007-06-10 10:10 | ホクレア


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