スカイ少年

〈ホクレア〉には現在、16歳の少年が乗っている。ニックネームは『SKY』。体験搭乗にやってきた人たちには大変な人気者で、もうオモチャみたいに可愛いヤツなのだ。下の写真では左の方、上半身ハダカでリヤカーを押さえている。見ての通り、どこにでもいるスケートボーダーのような感じだけど、こう見えて、実はアリヨシ元ハワイ州知事のお孫さんなのだという。

前回書いたセイルの片づけでは、どこからともなくやって来て、最後まで手伝ってくれた。だからお礼にランチをご馳走することになったのだ。
「何がいい?」「サシミがいい」「じゃ、定食だな」「いや、サシミだけでいいんだ」「ふ〜ん、じゃ、盛り合わせだな。2通りあるけど、どっちがいい?」「こっちでいいよ。だって、もう1つの方は高いでしょう?」。
コイツ、若いのになかなかわきまえているのだ。昨夜のパーティでもサシミばかり食べていた。やはり、日本人の血が通っているんだなぁ。とは言え、飲み物はコーラだったけどね。
「魚はナマがいいよね。あと、僕は納豆も好きだよ」
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「僕は赤ん坊の時、大きな相撲取りに抱かれた写真を撮ってもらっているんだよ」「誰だろう? 曙かな、小錦かな?」「どっちだかわかんないけど」「曙は背の高い方。小錦は太った方」「そう言われてもわかんないなぁ」
スカイは気になる日本語を見ると、英語でどういう意味なのか聞いてくることが多くて、そのたびに周りの日本のオトナたちは一生懸命考えることになる。

「アケボノって、どういう意味なの?」「ライジング・サン、かなぁ」「いや違う、夜明けじゃないか?」「って言うよりも、夜明けの空の色じゃなかったっけ」

「じゃあ、コニシキは?」「錦、ねぇ……」「高価な織物!」「ってのもヘンだろ」「錦の御旗ってあるけど、エンペラーの旗じゃダメなのかな?」「いや、ダメだ、ワカンネ!」

「プリカって何なの?」「何だ? プリカって」「あ、あのガソリンスタンドに書いてある」「プリペイドカードのことか!」「スカイって、カタカナは読めるんだね」

「来年〈ホクレア〉がタヒチに行くって言うでしょ、あれに乗りたいんだ。写真をいろいろ見せてもらったんだけど、不思議な景色も多いし、海はキレイだし、可愛い女の子もたくさんいるっていうし」「日本はホントに好きだよ。でも、6月2日には帰らなきゃいけないんだ」
ランチが終わって店を出ようとしたら、スカイは椅子をもとの位置にキレイに戻していた。こんなところに"明治の躾"を感じてしまう。将来は伝統航海士になるかもしれない16歳の少年にも、昔の日本が受け継がれていたのだ。
by west2723 | 2007-05-31 21:17 | ホクレア


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