最終回 〜 あるべき姿に戻る

まだまだ残暑が続いているけど、日は確実に短くなってきたし、日差しにパワーがなくなってきました。そう、〈ホクレア〉と共に過ごした今年の夏は、ようやく終わろうとしています。
各寄港地で〈ホクレア〉を迎えた人たちも、歓迎を受けたクルーたちも、今ではすっかり元の生活に戻っていることでしょう。ということで、僕もそろそろこのブログに一区切りをつけ、いずれまた、違うカタチで皆さんにお会いしたいと思っています。

最後くらい何か気の利いたまとめでもしておきたいところですが、あれほどの経験をまとめるなんてとてもできない。僕の回りでも、〈ホクレア〉に関わった多くの人がこの夏の経験を文章にまとめておこうとしていますが、みんな「やっぱ、ムリだわ」とギブアップしている模様。〈ホクレア〉のメッセージをすべて伝えようなんて思うと、いつまで経ってもこのブログは終わりません。あれほどのショックから立ち直るには、まだまだ時間が必要です。

しかしムリを承知でまとめるならば、〈ホクレア〉のメッセージは、「あるべき姿に戻ろう」という言葉に集約できるのではないか。その姿とは具体的にどのようなものなのかを話し始めるとこれまた長くなりますが、〈ホクレア〉やクルーの姿に、人それぞれの思いの中にある「人としてのあるべき姿」を見出したからこそ、これほど多くの人の心が動いたのではないかと思っています。
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日本で初めて見る〈ホクレア〉は、あまりにシンプルな姿をしていました。ちょっと隣の島まで行ってくる、というんならともかく、あの装備で、風の力だけで、ハワイからミクロネシアを回って日本までやってきたなんて、実物を目の当たりにして初めて、その凄さを思い知りました。もちろん計器らしきものなんてどこにもなかったけど、ナイノアは「GPSの歴史よりもカヌーの歴史の方がはるかに長いんだ」と涼しい顔で答えてくれたもんです。

「GPSもテレビもコンピュータも、単なる箱に過ぎない。たしかにその箱は役立つ情報を提供することがあるかもしれないけれど、その情報が役に立つかどうかを見抜く方法までは教えてくれない」
判断力のあるオトナであればともかく、子どもたちまでも「箱」に頼るクセをつけてしまうことが非常に危ないんだとナイノアは言う。
「たとえば雲、たとえば風、たとえば波。自然の中にもたくさんの情報が隠されている。それを読み解き、知恵に変え、自然と共に生きる能力が、このままでは人間から奪われてしまうかもしれない」

それは自然の中に限った話ではなく、人と人との1対1のコミュニケーション、あるいは個人対組織のあり方、リーダーシップの取り方、などなど、人間社会においても全く同様です。多くの人が生身の人間と付き合えず、生身の人間が発するサインを読み解く能力を失えば、この社会はいずれ遭難してしまう。しかし、箱はそんなことなどお構いなく、人を錯覚に陥れるだけ。「知っている」という気にさせるだけです。人付き合いなどしなくても、ウェブをまさぐれば生活に困らない程度の情報は手に入る。ココロの通う会話などできなくても、ブログの主催者くらいにはなることができる。

だからこそ、仲間と力を合わせないと無事に海を渡ることができない、カヌーの上では誰もが家族である、などという、口にするだけで赤面してしまうほどシンプルな言葉が〈ホクレア〉を前にすると誰のココロにもそのまま届く。だから多くの人は癒され、中には涙ぐむ人まで現れるのでしょう。いいんです、それで。泣きなさい、笑いなさい、なのです。ただし〈ホクレア〉がいなくなってしまったからと言って、いつまでも寂しがっていたり、あの場で思ったことを忘れてしまっては何にもならない。これからは自分たちが〈ホクレア〉になればいいんだと、僕は思うことにしています。
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僕自身は、これから少し身近なものに目を向けて行くつもり。それこそ家族とか、仲間とか、見慣れた風景とか、地域とか、仕事とか……。遠い世界で起こっているニュースも大切だけど、身近なモノゴトに目を向けないで、どうしてニッポンの政治とか文化とか天下国家を語ることができるでしょう。頑張りましょう。ま、たしかに、シゴトってかったるいけど。

上の写真は僕が長年夢に見ていたシーンで、"江ノ島を背景にした〈ホクレア〉"。そして下の写真は今年の1月、ハワイ島での出航セレモニーを終え、眺めた"西の太陽"です。撮影しながら「あの向こうに日本があるんだぁ……」なんて思っていたのは、もうはるか昔のことのようだよ。

ということで、そろそろこのブログもお開き。とは言え、せっかくここで知り合えた方々には、今後も何らかのカタチでおつき合いいただければサイワイです。以前メールアドレスをお知らせいただいた方には、また何か始める時に連絡差し上げます。逆に、何かあればいつでも連絡をください。まだの方、よろしければ非公開メールでお知らせください。
僕は決してハワイ通でもカヌーマニアでもないけれど、〈ホクレア〉が教えてくれたことや、カヌーや島や地球に関わるココロあるイベントには、できる限り参画します。いずれにしても、ここで皆さんと共有した価値観は、何らかのうねりと共に、いずれ再びひとつにまとまる予感があります。

それでは最後の業務連絡。
●国立民族学博物館特別展『オセアニア大航海展 ヴァカ・モアナ 海の人類大移動』 
9月13日〜12月11日
*なお9月22日〜23日、『オセアニアの偉大なる航海者たち』と題された国際シンポジウムが予定されています。内田正洋さんも出席すると言ってました。
内野かなこさんのトークイベント
タイトル:「ホクレアー伝統航海カヌー、ハワイから日本への航海」
講演者:内野加奈子(海洋写真家)
日  時:平成19年9月23日(日)13:00〜と15:00〜(計2回) 
会  場:国立科学博物館地球館地下2階、人類の進化展示室 ディスカバリーポケットにて
内  容:スライドやDVDを交え、星や波や風を使って海を渡るハワイの伝統航海カヌー、ホクレア。今年春行われた、歴史に残る日本への航海の様子や、伝統航海術のお話をお伝えします。
●テレビ新広島制作、ホクレア号日本航海ドキュメント『光の海道〜ハワイからの贈り物』
山口地区のみオンエアが決まりました。早く全国でやろうよ。
@TYS(テレビ山口)10/28(日)13:54~14:49(予定)。

以上です。
それでは1年間、おつき合いありがとうございました。このページはしばらく置いておきますので、コメントの交換はこれまで通り続けましょう。
これからも皆さんが、健康で、幸せな日々を送ることができますように願っております。マカさんは言ってたよ、「明日はいつも新しい」って。最近、その言葉が身に染みてナリマセヌ。まはろ!
by west2723 | 2007-09-17 13:10 | ホクレア


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