カニの爪の干物

昨夜はクルー全員集合の宴会があり、これが非常によくまとまった楽しいパーティだった。とは言えこの話を始めると非常に長くなるのでまたの機会に。その宴会の後、若いクルーはカラオケに行ったらしいけど、翌朝からはしっかり働いている。統率が取れているなぁ。
午前中のワークショップが終わると、早くも横浜出航に向けてカヌーの掃除が始まる。そんな時はぼんやり〈ホクレア〉の近くで見物しているわけにも行かず、何かと手伝うことが多くなるのだ。
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統率は取れているんだけど、仕事に「流れ」が無いことが彼らの特徴かもしれない。たとえばゴミを出したはいいけれど、それを運ぶ手段が無い。要らなくなった保存食をカヌーから下ろしたのはいいけれど、これを誰に渡すのか、そもそも写真にあるような大量の食料を、どうやって港から出すのかさえ、何の打ち合わせもない。「荷物下ろしちゃったけど、この後どうする?」って感じで仕事が止まってしまうのだ。誰もトラックなんて用意しているはずないし。ということで誰かが地元の知り合いに相談の電話を入れることになるんだけど、宇和島ではUddhaさんが、先日来お世話になりっ放しの老舗かまぼこ製造会社の専務に電話を入れた。

電話の後すぐにトラックが到着。ついでに浮き桟橋から荷物を運ぶリヤカーまで用意してくれた。専務は間違いなく宇和島の陰のヒーローだった。これは単に地元に詳しいと言うだけではなく、先を読む能力なんだろうなぁ。話せば非常に些末なことのようだけど、港でのこういう機転こそがハワイから遠い外国にやってきたクルーを助けることになるのだ。
ところで彼らの仕事を手伝うと、手伝いに来た人を残して、もともといた人が消えてしまうことが多いので要注意。たとえばセイルを干していた女性クルーがいて、ひとりで大変そうだったから、まずUddhaさんが手伝いに行った。それを見ていた僕と若旦那も駆けつけ、セイルの畳み方を教わり、ひとつ、ふたつと片づくうちに、肝心の彼女は「じゃ、後はよろしくね」と消えてしまう。
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でもまあ、見てください。あこがれのセイルが干物になっているこの姿。その大きさや質感を感じながら、ひとつひとつ畳んで行くヨロコビ。セイルとセイルを収納するバッグには同じ番号が振られていて、必要なセイルがすぐに取り出せるというシステムなんだけど、「ジブの18番」とか「フロントの25番」なんていうバッグの中に、「クラブクロウの3番」なんてのもあるわけです。この写真ではいちばん右がクラブクロウですね。つまり、僕がこれまでさんざん写真で見てカッコいいなぁ、と思っていたセイルが、今まさに僕の手によって折り畳まれようとしている……。なんて、こうして書いているだけで、僕もかなりのオタクなんだなぁ、と思ってしまう。
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まとにかく、こうして港に集まった人々に、次々と無理難題をふっかける〈ホクレアさま〉であります。それでも実際に手で触りながらメンテナンスの一部に加わってみると、長い航海の疲れを癒してあげたくなるから不思議なものだ。肩でもお揉みしましょうか、ってな気分になってしまうのだ。そんな何千何万という人々の小さな善意の積み重ねが、このカヌーをあれほど美しく磨き上げてきたんだなぁ、と思う。で、本日の圧巻は上の写真でした。ワークショップを終えた宇和島水産高校の生徒さんたちが、何と〈ホクレア〉の船底掃除を始めたのだ。これは肩をお揉みするどころではないな。デッキブラシが孫の手に見えてくる。いちばん痒いところに手が届く。さすがです、船の気持ちがよくわかっていらっしゃる。今日のお手伝いMVPは、白い制服が凛々しい水産高校の圧勝だった。
by west2723 | 2007-05-30 15:52 | ホクレア


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