反省会 その1

すでに〈ホクレア〉は沖縄を離れたとは言え、まだ7箇所の寄港地を残しています。しかし僕の回りは、すでにぐったり疲れた人たちの死屍累々という感じで、〈ホクレア〉に関わる誰もがストレスを感じ始めているようです。そこで、この航海を通じてどうすれば誰もが幸せになれるのか考えてみました。余計なこととは思いますが、ひとり反省会です。何かがうまく回らないと思った時にでも、ふと思い出していただければよろしいかと思います。

この予定の立たない前代未聞のイベントは、実に様々な人たちに支えられています。そして予定が立たないことに加えて、陸上の論理だけでモノゴトが動いて行くので、クルーが陸に上がった瞬間からさまざまなトラブルが発生します。そこで、それぞれのグループを分類し、それぞれの立場を理解すれば、トラブルの原因や、逆にもっと盛り上がる方法を探りやすくなると思うんですがどんなもんでしょう。そんなわけで、まずは登場人物の分類から始めてみましょう。

1:ハワイ州観光局
言うまでもなく、この日本航海の主催者。何よりも彼らの尽力が無かったら〈ホクレア〉の日本航海なんて向こう何年も実現しなかったことを理解しておかなくてはいけない。放っておいても観光客がやってくるハワイにおいて、その観光局が敢えてこのようなプロジェクトに挑んだことに感謝し、敬意を払い、支援したいと思う。また〈ホクレア〉を巡るあらゆる「動き」の情報が観光局に集まっていないと、つまり観光局がすべての情報のハブにならないと、不要な混乱の元となる。

ただし、彼らは決して海の専門家ではない。海の上で起こる様々なことへの予測が立てられない。カヌーの性格、カヌーを取り巻く海洋気象、そこから推定される日程、そして日本の港の構造、港での力関係などなど、「陸の論理」の通じない未知の分野にいきなりぶつかってしまって、まさに今、大変な思いをしている。困った時には下記「5」のスタッフとの連携が重要になると思う。

今後は陸上の都合やスケジュールに航海を合わせようとせず、あくまでも〈ホクレア〉の意志でスケジュールが弾力的に展開できれば、日本航海はさらに意義深いイベントに変わると思うけれど、どんなもんだろう?

2:〈ホクレア〉そして、海からやってくる人たち
日本の法律ではエンジンを持たない巨大な漂流物。だからこそ、日本の海のプロたちはみんな困っている反面、挑戦しがいのあるイベントだとも思っている。何より、その漂流物は目的を持っており、かつ確実に目的地に辿り着かせる技術を持った国宝級の人間たちを乗せている。

3:受け入れる自治体
観光局からの要請を受けて、日本航海をどうにか公式行事として認めてくれた人たち。地方によって温度差はいろいろ。瀬戸内エリアには熱い担当者が多いと聞いている。人事異動でこの4月から〈ホクレア〉に関わった人、つまりワケワカラン状態のまま本番を迎える担当者が多い。

4:各寄港地の歓迎イベント実行委員会
当然のようにやる気充分。常にハワイ州観光局の人たちやお役所関係とコンタクトを取りながら、クルーを日本人らしく暖かく出迎えるための準備を進めてくれている。彼らを翻弄するものは、日ごとに変わるスケジュールと、そのための各方面への連絡。

何はなくとも彼らが用意すべきものは、着岸の際に舫のロープを〈ホクレア〉から受け取る相手と、夜の到着に備えた照明、そしてワークショップの際にクルーが飲むための飲料水だ。イベントの演出なんて最後に考えればいいはず。まず無事に着岸させる方法さえ考えておけば、後はどうにかなるもんです。本番では、下記「5」のスタッフとの連携が極めて重要。

5:海でのサポートを行う日本人スタッフ
いかに伝統航海士とは言え、島をみつけることはできても、そこから先、動力を持たないカヌーでどのように港に入って良いかはわからない。そのための水先案内が主な任務。〈ホクレア〉に傷ひとつつけずにハワイに帰そうという気概に溢れている。

現在のところ、プロセイラーの西村一広さんと、彼の後輩である奥一等航海士(フルネームがわからない。普通に呼ぶと「奥さん」になってしまうので、みんな「オクイットウコウカイシ」と呼んでいる)、そこに内田正洋さんと彼の仲間が加わる。沖縄では海人の中の海人、シーカヤックガイドの大城敏さんも加わった。糸満で着岸の時、暗闇の中をジェットスキーで走り回り、〈ホクレア〉と〈カマヘレ〉への指示や、2艇を繋ぐ曳航用のロープを外していたのが彼だ。

6:漁師さん
観光局スタッフも実行委員会も、お役所に話してあるから大丈夫、と思うかもしれないが、それはあくまでも陸上での常識。海の世界ではもうひとつ、地元の漁師さんに話を通しておく必要がある。そこで、今のところは上記の「5」のスタッフが、もっぱら漁師さんとの交渉に当たっている。

漁師さんのほとんどは〈ホクレア〉のことなど知らないが、総じて動力を持たない航行に敬意を表してくれる場合が多い。つまり話せばわかる相手なのだ。当然ながら深夜や緊急時になるとお役所は機能できないが、漁師さんは臨機応変、絶大な力になってくれる。陸上のスタッフも、今後は漁師さんとはうまくつき合って行かなくてはならない。

そのためには、実行委員会や、できればお役所の人たちも、寄港前に観光局や「5」のスタッフと連絡を密にしておく必要がある。「5」のスタッフと地元の漁師さんとの連携の下、「間もなくホクレアが入港するので、全員配置に就くように」などの指示でみんながムダ無く動ければ、現場でのトラブルは半減するはず。

7:善意の第三者
観光局がプロジェクトを立ち上げる数年前から〈ホクレア〉に関わり、今回の航海にも協力を惜しまない人たち。あらゆる立場、あらゆる利害から、あくまでも中立を貫いているところに長年の余裕を感じさせる。具体的には、『ガイアシンフォニー』の龍村仁監督、写真家のニック加藤さん、内田正洋さん、といった人たち。ニックさんなんて自費でハワイから沖縄まで来てくれて、常にクルーの側にいて、いつも荷物運びを手伝っていた。アタマが下がります。

8:報道陣
ここに来てようやく〈ホクレア〉の凄さがわかってしまい、会社に無理を言って時間枠を取ったりページを取ったりしながら、大慌てで寄港地に駆けつけている。が、未だに予定通り進むスポーツイベントの乗りで取材に現れるため、現地では何も取材できずに途方に暮れることが多い。不明な点は観光局に問い合わせることになるが、このように先の読めない航海だけに観光局だってわからないことは多い。お互いパニックになる前に、〈ホクレア〉の行動パターンを読み、自ら事前に取材の段取りを決めておく『ホクレア勘』のようなものが要求され始めている。

9:歓迎に集まる人々
僕にとっていちばんナマの〈ホクレア〉を見てほしい人々。僕は分類上「8」の報道陣に入るのかもしれないが、気持ちの上では「9」に向かいつつあり、今は「8.5」の位置にいるのかもしれない。ナマの〈ホクレア〉やクルーに触れることを、今後も続く日常への刺激に変えて行きたいと思う。ただし、クルーは決してタレントではないのだ。必要以上に近寄ったり、カメラを構えたりすることだけは遠慮しておきたい。

なあんて分類するだけでも大変なことになってきました。今日はこのくらいにしておこう。
この作業は始めてみるとけっこう楽しいので、少しずつ時間をかけてアップデートして行きますね。
by west2723 | 2007-04-30 16:32 | ホクレア


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