いざっ! サタワル!

「ところでサタワルには行かないんですか?」
なんて声をかけられることが多くなった。ちょっと前までは考えられなかったことだ。かつては
「ミクロネシアって、いったいどこなの?」
なんて会話で始まっていた〈ホクレア〉の話も、間違いなく世間に浸透してきている。僕の回りには〈ホクレア〉色の強い人が集まっているとは言え、今ではまるでオリンピックの取材にでも行くかのように「サタワル」が登場するから、ホントに今から行っちゃおうかな、なんて気にもなってくる。

というように、サタワルにはかなり多くの日本人が取材に入るようです。前もって掲載する媒体を決めて行く人もいれば、出すあてはないけど、とにかく行ってしまう映像作家がいたり、とにかく船団が到着するシーンを見に行く人がいたり、もしかするとチュークから〈ホクレア〉で入るという贅沢な計画を持っている人がいたり。いずれにしてもサタワル到着を、この航海のハイライトと定めて動いている日本人が多い。凄いことです。費やす時間もカネもバカにならないと思うのに。

でもね、しかたがないんだけど、このようなサタワルブームを通じて広いミクロネシアのいったい何が伝えられるのか、少し心配にもなる。サタワルにはフォーカスが当たっても、それは今回の航海とミクロネシアの関係についてではなく、あくまでもハワイとマウの関係の話に落ち着いてしまうはずだ。僕はこの航海を機に、今まで知らなかった島々のようすを知りたかったし、近くて遠いミクロネシアを知るまたとないチャンスだと思っていた。〈ホクレア〉が訪ねる島のひとつひとつをレポートすることによって、ミクロネシアと日本の繋がりも実感できたと思うし、だからこそ、この航海のスケールの大きさも理解できたと思う。しかし、今の雰囲気では、そんな取材は期待できそうにない。

限られた時間とカネの中でできる取材といったら、これまでさんざん聞かされてきた〈ホクレア〉の物語を、後追いしながら写真に撮って来るのが精一杯となるのが常だ。だからこのままでは新たな発見よりも、物語の証明に時間を費やすだけの取材で終わってしまう。内田正洋さんが『ターザン』の取材でやってくれたような、無駄な方法が大切なのだ。できれば他の島にも寄ってみるとか、ちょっと余計なことをしない限り、せっかくの機会が台無しになってしまうかもしれない。

あとは〈ホクレア〉の意志に期待かな? 
ハワイ島でなかなか出航できなかったのは、「まだ機が熟していない」と、〈ホクレア〉が自ら動こうとしなかったからだと思っている。だからこそ、カワイハエで過ごした「何ごとも起こらない」数日間を、僕は無駄な時間だったとは思っていない。それと同じようなことが、サタワルで起こるなんてどうだろう。もちろん事故や嵐は困るけど、もっとポジティブなディレイだったら歓迎なのだ。たとえばあまりの歓迎ぶりに、なかなか出航できなくなるとか……。この際だから、ハワイ島出港時にステアリングに入った亀裂のような、修復可能な故障だったら許そうじゃないの。取材班は困るだろうけど、そのかわり、とても意味のある、無駄な取材ができると思う。期待してますよ!
by west2723 | 2007-03-06 00:47 | ホクレア


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