日本航海への不安、その2

日本航海のナビゲーターは、パラオ〜沖縄間をナイノア、沖縄〜愛媛間をチャド・ババヤーン(ハワイではナイノアの2代目とも言える伝統航海士)、そして愛媛〜横浜間からはブルース・ブランケンフェルドも加わり、ナイノアが担当することになりそうです。以前このブログでも書いた通り、現在のナイノア・トンプソン氏は非常に多忙で、とても半年近くハワイを留守にはできない状況。ナイノアファンはガッカリかもしれないけど、彼がいないからと言って〈ホクレア〉の価値が少しでも揺らぐわけではありません。どうか、沖合に浮かぶ2つの三角形を見に行きましょう。

ただ、非常に残念なのは、今の計画では有明海や関門海峡、瀬戸内海などの難所にナイノアがいないことです。



多くの名もない日本人が、〈ホクレア〉という名の途方もなく重いカヌーを先導し、曳航し、サポートしながら運ぶ姿だけは見てほしい。大陸棚の上に無数に散らばる潮流の中の日本列島には、どのような知恵が潜んでいるのか、〈ホクレア〉が未だ経験したことのない性格の海域を、日本人はどのように水先案内をするのか、ナイノアには、それを見ておく義務があるはずです。チャド氏も実績あるナビゲーターとは言え、まだ日本に来たことはない。初めて内海に踏み込んで慌てる前に、ぜひとも日本のクルーたちと顔合わせくらいは済ませておいてほしいものです。

おそらく、メディアの注目はパラオ〜沖縄間に集中することでしょう。そこにはあの伝統航海士、ナイノア・トンプソンが乗り、2人の日本人クルーもいて、ある地方テレビ局は、先日のテスト航海でレポーターを務めた女優さんを乗せることまで考えているという。いかにもテレビ的な演出だけど、〈ホクレア〉到着を広く認知してもらうにはいい機会になると思う。安全の妨げになることであればナイノアが許可するはずないので、その程度の取材は大丈夫という判断なのでしょう。怖いのは、この時期に突然現れる南岸低気圧で、発生が予測しにくいから台風よりも怖い。

ただし! 沖縄到着ではしゃぎすぎても困るんです。日本航海は沖縄がゴールではなく、スタートに過ぎないことをお忘れなく。ここから先、〈ホクレア〉を予定通り無事に運ぶことは、冒険と呼べるくらいに大変なことです。しかし、たとえば沖縄から福岡という、ジミながらもキツイ航程に乗る日本人クルーは、水先案内をするために海外での大きな仕事をキャンセルしなくてはならないらしい。しかも日本の海が初めてという初対面のナビゲーターと、干潟や海峡で格闘しなくてはならない。彼らにそこまで無償でやらせる権利が、いったい誰にあるのでしょうか? 使命や責任や誇りのためとは言え、彼らが背負ったものは、端で見ている我々普通の日本人に較べ、あまりに重すぎます。

もしもこのまま計画が進んでしまったら、いちばんつらい思いをするのは、主役であるべき日本人クルーたちです。どうか、ナイノアさん、PVSの皆さん、関係者の皆さん、まずは何よりも、彼らの声を最優先に聞いてみてください。そして、彼らが必要とするものや環境について、最大限に提供を試みてください。それができない限り、今回の日本航海は、その意味も目的も失うはずです。
by west2723 | 2006-12-23 23:23 | ホクレア


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