岩手県・野田村への小さな旅〜その2

伊藤多喜雄さんの音楽は、漁船の船頭だった父親から仕込まれた現場感覚溢れるタマシイの歌唱だけではなく、和楽器をズラリと揃えた『TAKiO BAND』による、たたみ掛けるような、アドレナリン全開の演奏を特徴にしている。あくまでも津軽三味線、尺八、和太鼓などの和楽器を中心に据えた編成が基本になるけれど、ジャズミュージシャンからの応援も多く、時にはドラム、ベース、ピアノ、サックス、ヴァイオリンなどを加えた大編成になることもある。ドラムに村上ポンタ秀一さん、サックスに坂田明さんが加わった、2005年NHK紅白の演奏を覚えている人はいるかなぁ…。

このバンドはメンバーの入れ替わりが活発で、多喜雄さんは積極的に若手の和楽器奏者を起用する。現在プロとして活動する和楽器奏者の多くが『TAKiO BAND』を経験しているほどだ。今回は尺八二人、津軽三味線一人に、女声ヴォーカルの柿崎竹美さん(この人がまた、秋田出身の天才民謡歌手です)という編成。翌週に控えた上海万博の会場に和太鼓を送ってしまっていることもあり、このようなコンパクトな編成になった。バンドは楽器運搬用のハイエースに乗り、運転を交替しながら東北道を北へ向かう。ところで、こういう移動の時間に曲順を決めたりするんだね。知らなかった。
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到着後、バンドが合宿所としているという古民家に向かった。どうですか、この風格! 村の中心部から狭い山道を走ること20分ほど。このような古民家が数軒ならぶ限界集落が忽然と現れる。すでに住民がいなくなった集落を、まるごと村で買い取り、『アジア民族造形館』という施設として保存を決めたものだ。やるなぁ、村長。消えかけていた民家がこれほど立派だったなんて、このような取り組みがいかに大切なものかがわかる。
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多喜雄さんは、その中の一軒を借りてバンドの合宿所にしている。神棚や調度品も残っており、以前ここに住んでいた人の生活が偲ばれる。その日は気温30度を超える暑さだったものの、中に入ってびっくり。畳の部屋にはどこからともなく風が入ってきて、冷房の必要がなかったという日本家屋の実力を体感する。あまりの涼しさに、バンドのメンバーはあっという間に昼寝に入ってしまった。
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土間に向かうとさらにびっくり。誰もいなかったはずの囲炉裏に火が入っているのだ。このような古民家は、囲炉裏の煙を絶やすとすぐに傷み始めるとのこと。そのために『アジア民族造形館』のスタッフが毎日火を入れているらしい。もちろん、室内は隅々までキレイに手入れされている。このような維持管理ができるのは自治体あってのもの。こういうことに使われる税金は、未来に向かって生きてくるはずだ。何ならふるさと納税しようと思うんだけど、村長から連絡が来ないなぁ…。
by west2723 | 2010-09-03 10:57 | 音楽


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