岩手県・野田村への小さな旅〜その1

初めて野田村の村長さんにお会いしたのは、梅雨明け間もない7月の下旬だった。日本民謡歌手の伊藤多喜雄さんに誘われて、恵比寿の居酒屋で飲み始めてからほぼ1時間後、村長は汗を拭きながら、重そうなバッグを抱えて現れた。こんなに書類を抱えて、いったいどんな出張なんだろうと思ったら、全然違うんです。見せてくれたバッグの中には、野田村名産の自然海塩『ベコの道』『塩蔵わかめ』の真空パックがぎっしり。こうして野田村を離れるたびに、会う人ごとに、この塩とわかめを手渡しているという。凄いなぁ〜と思った。働く首長さんは、人知れず、こんな努力をしているんだ。
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野田村は三陸海岸の北部に位置し、海あり深い山ありの、大自然がそのまま残る村だという。目立った観光こそないけれど、全国の自治体の中でも、特に交通事故の少ない村だとのこと。村民の安全と平和な暮らしを守り、村長自らが、こうして村の産業のPRに歩く。五穀ならぬ護国豊穣。このようなリーダーを相手に、党派がどこかなんて聞きたいとも思わない。そんな話は小さいのだ。僕は国会議員にも何人か会ったことはあるけど、東京でろくに仕事もせず、地元での人気取りばかりがナリワイになってしまった彼らより、たとえ小さくても故郷を背負うリーダーの方が、はるかに大きく見える。
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ところで特に観光が無いとは言うけれど、この辺りの夏祭りで歌われる民謡が、『ソーラン節』を始めとする北海道の多くの民謡の基礎になっているらしい。そんな縁もあって、伊藤多喜雄さんと村長のつき合いが始まって3年目。日本中で失われようとしている民謡を発掘し、怒濤のような和楽器の演奏によって蘇らせてきた「戦う民謡歌手」にとって、これは意気に感じるつき合いであることは間違いない。そして今年も小さな村祭りのビニールシートのステージに、NHK紅白二度出場の歌手が立つというのだ。そんないいもの見に行かなくてどうするの、ということで、この小さな旅が始まった。
by west2723 | 2010-09-02 18:09 | 音楽


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